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2010年10月29日(金) 
書名:古本奇譚
著者:出久根 達郎
発行所:平凡社
発行年月日:2009/12/10
ページ:452頁
定価:1600 円+ 税

1993年「佃島ふたり書房」で直木賞を受賞した。杉並区で古本屋を経営しながら文筆活動をしている。古本屋商売で出会った出来事、人、エピソード、本の話、作家の価値などをエッセー風に綴った本です。話がいろいろなところに飛んでいく、どのページから読み始めてもそれなりに楽しめる本です。

「今日このごろ」という言葉、幸田露伴が「昨日このごろ」と書いている本があるとのこと。「丁字花さく 昨日このごろ、われ籠(こも)り居の心憂きかも」昭和30年代にテレビのニュースで「今日このごろ」という言葉が広まった。とでも露伴の娘「幸田文」が「今日このごろ」と書いた本を昭和33年に出していると。こんなちょっとした話題がそこかしこに散りばめられている。本との出会いを楽しくしてくれる。

また本の楽しみ方を教えてくれる。本は読む前から楽しむもの。本屋で雑多に並んだ本から選ぶ、そして買うか買わないかを考える。そこから実は本を読んでいる。インターネットで注文して宅配で手に入れた本はどこか物足りない。古本屋で何年の探し回って手に入れた本、読まなくても手に入れるだけで満足したりして人それぞれに本を楽しむ。面白い本です。また出久根氏の視点がすこし斜めから視点もおもしろい。非常にユニークで頑固でそこに筋が通っているところが良い。

本書より
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この世にあるものには、名がある。名があれば、本がある。ものの数だけ、名の数だけ、本は出ている。だから読みたい本はすべてある。見つけないだけだし、見つからないだけである。

「資本家」とは四本蚊なり、即ち四足の蚊。人間の生き血を啜ることは虫の蚊と同じなれど虫は脚六本、差引勘定二本少なし、而も人間より二本多し。即ち虫でもなく人間でもない労働者の生き血を啜る一種の吸血動物なり、と「新聞」とは、女の土左衛門をことごとく美人にする奴。「間抜け」とは、郵便葉書に親展と書く奴。

効率のみを考え、わずらしさを避けた商売は、遠からず行き詰まる。古本屋に限らずこれからの商売は、以前のような対面販売に戻るのではないか。私たちはいつの間にか、肝心のものを忘れていた。売る側も買う側も互いが人間であることを、ころりと忘れていた。

私たちは知らずしてロボット化していた。人間らしい生き方ではない。会話する相手は、いつも携帯電話の向こうにいる。電話を通してしか会話が出来ない。なぜ直接に、面とむかって話をしないのだろう。こういうことに気づいて、愕然とする。当たり前だと思っていたことが、実は当たり前でない。

革新を叫ぶ者たちが、うさんくさく感じられて仕方がない。あたらしく変わることが、必ずしも良いことではあるまい。
古本は歴史の証人である。為政者たちがどのようなことを行ったか、書物は記録している。これを後の世に伝えるべく手伝うのが古本屋だ。本の命を慈しみ、永らえさせる商売。本に金銭価値を与えることで本は何百年も生きのびるのである。

閲覧数2,029 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2010/10/29 22:58
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