440年以上前から続く本牧のお馬流し。神奈川県の無形民俗文化財に指定されているハマの奇祭だ。
お馬とは茅(カヤ)で作った空想上の動物。頭が馬で、胴体が亀、さらに羽まで付くという格好をしている。
祭りのために造られるお馬は6体。この数は旧本牧六ヶ村の間門、牛込、原、宮原、箕輪、台に対応しているのである。
お馬を作る茅は、神社境内にある「茅場」から採取するのだが、これを作るのは昔から本牧箕輪の羽鳥家と決まっている。
祭りは2日にわたって執り行われる。
初日は、羽鳥家から出たお馬を神社で迎える「お馬迎え」。板の上に置かれた6体のお馬が、紋付羽織に袴、白足袋という正装姿の氏子たちの頭上から頭上へと、まるで運動会のボール送りのように引き継がれていく。
ただ、ボール送りはスピードを競い、早く送り込んだチームが勝ちとなるが、こちらは氏子が一歩進むごとに両脚をそろえて静止するというユッタリした歩み。
禅僧が居室から座禅堂に向かうとき、一呼吸で半歩進むという歩き方に似ている。
▲お馬迎え
2日目はお馬送りとお馬流し。
神社を出発したお馬6体は、船を模したトラックの屋根に安置され、氏子各町内を巡行し地域の災厄を乗り移つらせたあと、本牧漁港へと運ばれる。
▲お馬送り
漁港敷地内でトラックから降ろされたお馬は、再びユッタリとした歩みで氏子の頭上から頭上へと渡されていく。
しかし、船が係留されている岸壁の20mほど手前まで来ると一旦停止。
ここからは神事が一変する。リーダーの合図とともに氏子たちは神船めがけて急激に駆け出す。これを「せめ」というそうだ。
▲お馬流し
あらゆる災厄を託されたお馬は、船に乗せられて本牧沖の海上で流される。
これがそのまま流れ去ってしまえばいいのだが、万一、流したお馬が陸地へ舞い戻ってくるとまずい。そこで、祭りは潮の干満が重要になってくる。
このため祭日は8月第1か第2日曜日で、毎年一定していない。
posted by よんなん